2011年 08月 30日
古代陶器ロマンチシズム
8月始めの暑い盛りにフェティエに来た僕らは、遺跡巡りには足が向かない。
でもちょうど滞在中のペンションの近くに博物館があったので、そちらをのぞいてきました。
フェティエ近辺で発掘された古代の陶器、彫刻、ガラスなどがたくさん展示してあり、
陶器についてはデザインや技法で勉強になることも多かったので少し紹介します。
ワインやオリーブオイル等を貯蔵する陶器の壷。(ヘレニズム〜ローマ前期)
Lagynosと言うそうです。
液体を入れても大丈夫ってことは、ある程度焼き締まってるということなのかな。
同じくLagynos、
こちらは赤土に白化粧をしてベンガラで絵付けされています。
ヘレニズム期のSkyphosと呼ばれるワインの杯。
こういった陶器でワインを飲むのもいいですよね。ワイン杯、作るか!?
そのとなりにあったお碗がまた興味深い。
器の表面の加飾、縄目文様みたいなものかなと思いきや、
よく見てみるとこれは間違いなく“飛びカンナ”です。
飛びカンナって古代ローマでも使われた技法なんだな。びっくりした。
これらもヘレニズムあたりの器。
手前の器、形といい質感といい、茶道に使う楽茶碗みたいですね。
となりに“本阿弥光悦”と立て札が置かれていても違和感ない。
何用なのかは残念ながら説明がありませんでした。
Amphoraという貯蔵カメ。
ブドウや穀物、ワインやオリーブオイルなどを入れて保存、運搬をするためのものです。
写真では分かりませんが、 底が尖っていて自立できないものもあります。
そういうものは柔らかい地面にさしたり、穴があいた専用の台にさしたりして立たせるそうです。
最初から平たい底のものを作ればいいのにと思うのだけど・・・(作るのも手間がかかるよね)
Kraterと呼ばれるワインと水を混ぜるために使われたカメ。
古代ギリシアでは、希釈しないワインを飲むのは大変な「無作法」と見なされ、
そうして飲む人物は節度と徳に欠けた大酒飲みと見なされた(wikiより)ということです。
昔のワインは今のものよりだいぶ濃かったのかもしれませんね。
これも同じくKrater。
Red-figure(赤像式)という技法で描かれています。
生乾きの赤土の陶器の表面に泥漿のようなもの(ニス?とも)で絵付けがされています。
焼成すると絵付け部分が光沢のある黒になるそうです、
Red-figureの名称の由来は、人物等のモチーフのシルエットが赤土の素地の色(赤)であること。
これに対しBlack-figure(黒像式)というのがあります。(年代的にはこちらが先)
こちらは人物等モチーフのシルエットを泥漿で黒く塗りつぶしてから、針のような先の尖ったもので
ディテールを描いていく技法です。要するに掻き落とし、ですね。
人物像が黒になるのでBlack-figureと言います。
こういったものがBlack-figure。
この両技法、古代ギリシア陶芸の歴史の中でとても重要な技法で、
絵付けの特徴的な黒は鉄還元法などと呼ばれる焼成方法で焼かれたそうです。
僕も難しいことはよく分からないので、興味のある方は上記リンク先Wikiを参照してください。
※英語版はもっと詳しいです→Black-figure&Red-figure 写真を見るだけでも面白いですよ。
さて、これが何だか分かる人はいるでしょうか。
ローマ時代を背景にした映画などで目にしたことがあるかもしれません。
Kandilと呼ばれるオイルランプです。
Kandilの上部には凝ったデザインが施されているものもあります。
菊紋っぽいです。
面白いのはこれ。
キリスト以前のギリシア・ローマの文化っておおらかであっぴろげで気持ちがいいですね。
今こういうの作ったらあまりいい顔されないだろうな。
もっと大胆な構図もあり。
こういったモチーフはこのKandil=オイルランプでよく使われたそうです。
寝室用オイルランプはこういうモチーフなのかなあ。ローマ人はこれを見て燃えるのです。たぶん。
屋外には大きな貯蔵カメがありました。
だからなぜ底が尖った形になってるんだろう?不思議だ。
今回は体力と知識の都合で陶器だけ紹介しましたが、彫刻とガラス工芸もたくさんあったし
古代の硬貨は文明別、年代別に展示されていて面白かったです。
たまにはこうやってのんびり博物館探索もいいものですね。
Fethiye Müzesi ※イスタンブルに同名の博物館がありますが別物です
Kesikkapı Mah. Okul Sok. Fethiye/Muğla
0252 614 11 50
応援クリック、よろしくお願いします^^
本当に楽しいですね。
でも、チニをやるまでは遺跡?・・かったるいなぁぐらいに
しか思っていなかったのですが、色々チニや陶芸を見るうちに
昔の作品の面白さをちょっとだけ感じるようになってきました。
この、Black-figure(黒像式)の作品。
この後、私もタイルで作る予定です。(ずっと後ですが・・)
平面の同じような色合いのタイルと、立体の壺を黒く化粧土で
塗りその上から絵柄を針でひっかいていくというものも
作ります。
そっか~ここから来ているんですね。とっても参考になりました。
色合いも味があって、早く作りたいな~と思っていたところです。
最後のKandilの作品は、大胆ですね。
でも、歴史の貴重な作品と思うと変な感じを受けないのは、
変ですね。
そうそう、よくハワイとかギリシャとかのお土産屋さんで、
男子が喜びそうなとんでもない置きものとかありますよね。
もらってもどうすんの~っても感じの。
こうやって、見てみると博物館も面白いですね。
そうそう!ワイン碗!是非作ってくださいね。(*^_^*)
僕自身も博物館などに行くのはあまり気が進まないほうだったのですが、
嫁さんが遺跡や博物館巡りがすごく好きで、それにしぶしぶつき合っていると
たまに面白い発見をしたりして次第に楽しくなってきたという感じですね。
自分の仕事でアイデアなどが煮詰まっている時にこういうところに行くのも、
スランプ脱出のきっかけになったりするのかもしれないなあと思います^^
21番のつぼの形をどう作るのかの疑問点というのは、
ボディの円盤状の鋭角のラインをどう成形するか、ということですよね。
これはたぶん、ボディの鋭角のラインを境にした上の部分と下の部分を
別々にろくろで作って、ある程度乾燥した後に接着したのではないかと思いますよ。
底の尖ったつぼは、これも底の部分だけ別作りにして後から逆さにしたボディに接着した
のではないかということです。乾燥はそのまま逆さの状態で乾燥させたのでしょう。
古代ギリシア陶器にはこういった“上下別作り、後から接着”という作り方が
けっこう多いらしいんですよ。陶工の腕も良かったんでしょう。
陶器の作り方って考えたらいろいろあるんですよね。面白いでしょ?
こうやって詳しくどなたかに解説して頂けると古代陶器もさらに面白いですね。トルコの溢れんばかりの遺跡、発掘物、博物館がすごいものだというのはわかるのですが多過ぎて今まで一つ一つメモ読んでも何ともピンと来ませんでしたがteppeiyamaさんの解説とてもためになりました。またお邪魔します。
記事を気に入っていただけてありがとうございます。とても嬉しく思っています。
僕も普段は博物館などは一通り見てそれでおしまい、という感じなのですが
今回見たギリシャの古代陶器はなかなか面白かったんですよね。
博物館ではちゃんとメモしてその後も真面目に詳細を調べてみました。
形や絵付けやデザインにその土地の当時の文化が現れていて、ほんとに興味深いです。
僕の浅い解説くらいでも、そこから古代陶器に興味を持っていただける人がいるのならば
こうやって記事を書いてみた甲斐があったってものです。
これからもたまにのぞいてみてくださいね。
陶芸生活というタイトルなのに、バスケットなど陶芸と関係ないことばかり書いてますが・・・。
スポーツネタのところへ書きにくかったので、ここで。
DUNCANのEnvision Serisiの釉薬って使ったことがありますか?
http://hobiseramik.com/category.php?cat=43
というかホームページがリニューアルしてたのに驚きました。
DUNCANってアメリカのメーカーみたいですね。
品質いいと思いますよ、試してみられてはどうでしょう。
でもその前に釉薬の適正な焼成温度をお店の人に聞かないとダメですよ。
1020℃〜1080℃の釉薬と1200℃の釉薬がありますから、間違った釉薬を買わないように!
私は古代ローマの建築について学んでいるものですが、
多分大きな甕の底がとがっているのは、
この大きな甕を土の中に埋めて使うためです。
土の中に埋めた甕の中に穀物やワインなどを入れて貯蔵することは
古代においてはしばしば行われています(冷蔵庫はありませんから・・・)。
いつからこの形の甕を埋めていたのかは私にもわかりませんが、
少なくともヒッタイトではこのタイプの甕はあったと記憶しております。
(昔博物館に行ったときに見ましたので)
昔のエントリーですが気づいたので念のために書かせていただきました。
甕について情報をありがとうございます。
そうですね、昔はこういったものを地中に埋めて保存容器として使用したのでしょうね。
あと船で運ぶ時には、甲板等に設置してある専用の穴にカメの底を突っ込めば、
船が波で揺れてもカメが倒れない、ということでした。
ただ陶器を作る者の視線としては、底の尖ったカメなんて作るの面倒臭いだろうなあと
思ってしまうんですけどね^^